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メルボルン
現地リポート

2022年全豪オープンの様子を
みなさまにお届けします。

VOL.01

テニスライター 内田暁コラム

シーズン開幕を飾る全豪 日本が紡いできた名勝負と躍進の軌跡をたどる

“グランドスラム・オブ・ザ・アジア-パシフィック”——。

 シーズンの開幕を飾る全豪オープンは、そのような愛称を持つ。
 開催地のメルボルンと日本の時差は、わずか2時間。
 会場には、日本人を含むアジア系の観客が足を運び、それぞれの母語で熱い声援を送る。
多くのアジア人選手が「ホームのような大会」と呼ぶこの地では、日本のみならず中国や韓国の選手たちが、名勝負と躍進の足跡を紡いできた。
 
 最初に歴史が大きく動いたのは、1994年。
 この年の全豪オープン・ベスト4進出者のリストには、ときの絶対女王シュテフィ・グラフに、世界2位のアランチャ・サンチェス、さらには美貌と豪快なテニスで絶大な人気を誇ったガブリエラ・サバティーニという、錚々たるメンバーが名を連ねた。

 その中に、極東の島国から日の出の勢いで駆けあがり、アジア人女子選手として初めて、グランドスラム準決勝進出の快挙を成した選手がいる。163センチと小柄ながら、ボールの跳ね際を叩く「ライジングショット」で世界の強豪たちを手玉に取った彼女の名は、「Kimiko Date」。世界のメディアは、日出づる国から現れたテニス界の新たなスターに、「Rising sun(ライジング・サン)」のニックネームを与えた。

1994年 全豪オープンでの伊達公子さん

伊達公子が切り開き照らした海路に、18年後に日本人男子が続く。当時世界の26位だった22歳は、4回戦で6位のジョーウィルフリード・ツォンガをフルセットの死闘の末に破り、ベスト8への扉を開いたのだ。
 もったいぶるまでもなく、日本人男子としてオープン後初の快挙を成したのは、錦織圭。オーストラリアのメディアは、実年齢よりさらに若く見えるアジアテニス界のパイオニアを、“孝行息子”とかけて「Rising son(ライジング・サン)」と呼んだ。

その後も全豪オープンは、日本人にとってホームのようなグランドスラムとなる。
 2017年には女子ダブルスで、穂積絵莉/加藤未唯組がベスト4に進出。グランドスラムの常連となった西岡良仁にとっても、2020年の全豪3回戦進出が最も良い戦績である。
 そして、2019年——。大坂なおみが、新たな歴史の扉を開いた。
 前年のUSオープンを制し、“日本人初のグランドスラム優勝者”となった大坂は、この年の全豪オープン第4シードとしての重圧を背負いながら、苦しい試合を勝ち上がっていく。
特に決勝戦のペトラ・クビトバ戦では、第2セットで相手サービスながら3本のマッチポイントを手にするも、硬さが見えていずれも逃す。落胆の色を隠せぬ大坂が第2セットも逆転で奪われた時、グランドスラム連覇の夢は、大きく遠のいたかに思われた。
 だがファイナルセットの大坂は、試合開始直後のような集中力と闘志をたぎらせ、満席のファンを驚かせる。勝利の瞬間にこぼれたのは、歓喜の笑みでなく、安堵の涙。同時にこの時、彼女はアジア人選手として、男女を通じ初の世界ランキング1位に上り詰めた。

カクテル光線に照らされた優勝セレモニーは、ある種の感傷を伴った、この瞬間を彩るに相応しい演出となる。
大坂にトロフィーを手渡したのは、中国の李娜(リー・ナ)。彼女こそが、アジア人女性として初のグランドスラム優勝者となり、世界2位にも到達し、2014年に大坂に先駆け全豪オープンのトロフィーを抱いた、アジアテニス界の革命家である。
 大坂はかねてよりリー・ナを、ウィリアムズ姉妹やマリア・シャラポワと並ぶ、「アイドル」だと公言してきた。
 そのリー・ナが、幼少期に足を運んだテニスクリニックでプレーする姿を直に目にし、尊敬してきた選手こそが、伊達公子だったという。
 
 未だCOVID-19の脅威がテニス界に少なくない影響を及ぼすなか、全豪オープンは1月17日に観客を入れて開幕する。
 シングルス男子の本戦出場者は、小さな巨人こと西岡良仁と、予選3試合を勝ち上がったダニエル太郎。


女子は、前年優勝者の大坂なおみに加え、ベテランの領域に差し掛かるも心身ともにフレッシュな土居美咲が、今まで以上の高みを目指す。

ダブルスでは、同大会ベスト4の実績を持つマクラクラン勉が出場。
 昨年のWTAツアーファイナルに出場した青山修子/柴原瑛菜に、2018年全仏オープン準優勝ペアの穂積/二宮真琴、そしてジュニア時代からメルボルンで多くのコートを踏んできた加藤らも出場者リストに名を連ねた。
 先達たちが切り開き、連綿と紡いできたアジア選手躍進の年表に、今年、新たな記録がまた刻まれる。

内田暁

内田暁

twitter

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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